てがみ: qatacri at protonmail.com | 統計 | 2025

202515300

以前、土佐日記を日本最古のブログと称している人がいた。私が読んだことのある最古のブログは徒然草で、二番目はたぶん朝永振一郎の滞独日記である。滞独日記はもともと公開前提で書かれたものではないと思われるが、のちに一部分を朝永自身が学内新聞に寄稿している (私はこの部分しか読んだことがない)。

朝永振一郎教授の「思い出ばなし」 (滞独日記は後半部分)

およそ私的な日記らしからぬ美しい情景描写、輝かしい業績からは想像もつかない自己評価の低さと苦悩。この文章はポスドクとか博士課程の人に刺さるらしく、辛いときに何度も読んだ、滞独日記に救われた、という話はよく見聞きする。

しかし読みかえしてみると、息をするかのようにドイツ語の小説を借りて読んだり、映画を観に行ったりしていて、まず「ドイツ語力やばい」という感想が最初にくる。大学外の人々とも交流し、いろいろな場所に出かけ、研究も (書きぶりに騙されそうになるが) 着実に進んでいる。加えてこの文筆力である。冷静に考えると凡人が共感するようなところは微塵もないのだが、それをさせてしまうのが恐ろしい。