てがみ: qatacri at protonmail.com | 統計 | 2019

201908801

物理のイメージが間違っているといえば、ふと思い出したこと。

昔、音波が伝わるさまを分子が分子を押して伝播していると (軟体中を振動が伝わるのと同じ形で) 説明して、あとでこれは正しくなかったと反省したことがある。考え直してみると、今でも分かっていないと気づく。

空気は理想気体がよい近似であり、分子と分子がおしくらまんじゅうするような描像は間違い。けれど本当に相互作用がない、つまり分子同士の衝突も一切考えないモデルも正しくない。

http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/e-scimath/contents/t24/textbook_t24_c01.pdf
http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/e-scimath/contents/t24/textbook_t24_c02.pdf

例えばこういう導出では状態方程式を使っていて、局所的に熱平衡に達していると仮定していることになる。分子同士が衝突しないと熱平衡には達しない。この意味で分子同士の衝突によって音が伝わっているというのは正しい。ちなみに常温常圧下での空気の平均自由工程は 70 nm くらいらしい。めちゃ衝突している。

ただ、局所熱平衡に達しているという仮定は考えてみるとけっこう微妙である。音速・分子速度・熱平衡領域の広がる速度は同じオーダー (三つ目は嘘かも) であり、矛盾はしていないがとても際どい使い方である。もちろん結果の式は正しいのだろうけれど、論理として正当化できるものではないように思う。