考えてみると、どこまでが科学的思考かはすごくあいまいである。たとえば、ニュートン力学の範囲で「重力がなぜ逆二乗則に従うか」と考えることは科学ではない、というのは原則的には正しい。でもニュートン以後の物理や数学の発展からすれば、この問いが無意味ということはまったくない。
現代でも通用する例だと、観測問題なんかは微妙な立ち位置にある。実際にかかわりたくない感じの議論も多くて、眉を顰めたくなる気持ちはわかる。でも本当に "Shut up and calculate!" の人たちばかりだったら、量子計算みたいな分野は出てこなかったのではないかという気もする。実際に考え出したのは物理の人ではないわけだし。 100 年間たくさんの人が考えて、基本法則としての物理に新しいものが出てこなかったことは承知しておく必要があるけれど、いろいろ考えてみること自体は無意味ではない、と思う。