てがみ: qatacri at protonmail.com | 統計 | 2022

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AST SpaceMobile が通常の携帯端末と直接通信する人工衛星を作っていると読んだとき、最初は「本当に可能なのか。 hype じゃないの?」と思った。まあバカでかいアンテナを作れば理論上は可能なのかもしれないけれど…と思っていたら、実際にかなり大きいアンテナを作っていた。

AST SpaceMobile secures communications with prototype - SpaceNews

軽く必要なアンテナの大きさを見積もってみる。以下素人の書いたことなので信頼性はない。まず数字を列挙する。

人工衛星は地上の基地局と比べて 100 倍遠いので、電波の強さは 10^-4 倍になる。地上の基地局がダイポールアンテナ一つで 5 km をカバーしていると仮定する。 10^4 の利得を得るために、波長程度の間隔で 100 × 100 個のアンテナを敷き詰めると、 10 m × 10 m の大きさになる (位相を揃えられる前提)。

次に指向性について。地上からは広い地域から電波が飛んでくるので、地上の基地局一つがカバーする領域、おおまかに 1 deg くらいの指向性が必要になる。

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100 × 100, 素子間隔 = 波長でのフェーズドアレイアンテナのビーム幅 (-3dB) はだいたい 2 deg (式 15). ちょうどいい数字に思える。素子間隔が小さい方がビーム幅を小さくできるのはちょっと意外。

ここで AST SpaceMobile の説明を読み返してみると、面積は 64 m^2, 写真からは 48 × 48 個のアンテナがあるように見える。おおざっぱな計算なので、誤差の範囲でよく合っている。

地上での実例として、屋久島では 35 km 離れた種子島に設置したアンテナと通信しているらしい。アンテナ (カバー含む) のサイズは 1.5 m × 1.5 m とのこと。

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ということで、少なくとも物理的に不可能というレベルではなさそう。