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冷凍と微生物の死滅 | 食品微生物学(検査と制御方法)|基礎と最新情報を解説|木村 凡

 以上述べたようにサイエンスとしては、この記事の冒頭での疑問、すなわち、「細菌は冷凍保存により死滅するのか、あるいは死なないのか?」という問いに関しては、「冷凍により細胞損傷が起き死滅する」と答えるのが正しい。ただし、食品衛生上の実用的な観点からの回答としては、「冷凍には殺菌効果はない」という解答 も正しい。むしろ後者の理解の方が現実的には正解と言える。なぜだろうか?

 それは微生物の数において、一桁の程度の生菌数の減少というのがほとんど意味をなさないからである。確かに人間などでは1000人が100人に減ってしまえばこれは大惨事である。しかし微生物の場合は1000が100に減少したところで、わずか3分裂で元の数に近くにもどる。1細胞が一分裂のより2細胞になる。2度目の分裂で4細胞になる。3度目の分裂で8細胞になる。例えば、サルモネラ菌や大腸菌などの場合、至適温度では、一分裂に要する時間が30分程度なので、冷凍食品を解凍した後に、常温で一時間半も放置すれば元の数に戻ってしまうということである。このように考えれば「細菌は冷凍では死なない」、「冷凍に殺菌効果はない」と考えるのは実用的であろう。