母は私が小学生のときからよく「どうしてこんなに頭のおかしい子に育ってしまったのか」とこの世の終わりのような表情で涙を流しながら訴えていた。残念ながらその子どもは頭のおかしいまますくすくと成長し、いまだに母と顔を合わせるたびに世界の終わりの表情でおろろん、である。ちなみに機嫌が良いときは手書きの推薦文付きでオカルト本を置いて去っていく。
まあでもアティヤのような大数学者でさえ歳には勝てず、論理的でない主張をしてしまったりするのだ。私のようなプリン頭は早々にトンデモ化しても何ら不思議ではない、とこの世の無常さについて思いを馳せていたところで、ちょうどよいトンデモ事例を見つけてしまった。
http://gotoclinic.org/timespace2.pdf
前置きとして、私はトンデモであれ何であれ人をあざ笑うのはあまり趣味ではなく、以下に書くことにもそういう意図はない。
全部読むのはさすがに時間の無駄なので、最初の (新) 複素数によるローレンツ変換の部分だけレビューする。不要なぜい肉をそぎ落とし、諸々を好意的に解釈して要約すると次のとおりである。以下 c = 1
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<追記>式がいろいろ間違っていたので訂正。ついでに split complex number について言及。</追記>
座標 (t, x)
を D = t + ix
と複素数で表す。このとき B = 1 + iβ
とおいて D conj(B) / |B|
を計算すると、
[(t + βx) + i(x - βt)] / √(1 + β^2)
となり、ローレンツ変換
t' = (t - βx) / √(1 - β^2)
x' = (x - βt) / √(1 - β^2)
と似た式が出てくる。そこで h^2 = -1, ih = hi, conj(h) = h
となる数を導入 (注: 最後の定義については原文に記載がないので推測) し、 D = ht + ix, B = h + iβ
とおいて前回と同様の計算をすると
[h(t - βx) + i(x - βt)] / √(1 - β^2)
となり、ローレンツ変換が導出される。めでたしめでたし。ちなみに √(-1)
まわりの計算は基本的に破綻しているので、自分に都合の良い方へ適当に解釈しよう (ただちゃんと構成し直せる可能性はある気がする)。
…うーん。けっこう惜しい。これをパラっと見て「ああミンコフスキー空間上の回転だからね。というかその h …」などと考えた人は、ローレンツ変換がミンコフスキー空間上での回転であると知っている人のはず。筆者がそのことを知らずに上の導出を考えたとしたら、決して筋は悪くない。悪くないどころかこれをうまくやると、たぶん split-complex number になる。すごい。
当たり前のことかもしれないけれど、トンデモさんかどうかは頭の良さの問題ではない。では何が問題なのか。かっこ良さげなアイデアがあって部分的にうまくいくからといって、都合の悪い部分から目を逸らすのは良くない。あと先人の研究はちゃんと勉強する。あたりになるのかな…。
正直になところ耳の痛い部分もある (特に後者)。誠実さを失わないようにしよう。
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